年がら年中スーパーの「ゆでそば」を好んで選んで食べていても痩せない私は、その理由を知っている。
それでも私はスーパーの「ゆでそば」が好きだ。
この時期になると五割ぐらいの「ゆでそば」が出てくるので大量に買い込む。
三食「ゆでそば」でも良いくらいに具材を用意する。
近所に気軽に入れる蕎麦屋はないし、そば打ちを始めるほど場所も技量もない。
生めんや乾麺をゆでる部屋ではないところに住んでいるので、今の生活に精一杯出来る「そばの食べ方」を堪能している。
もともと「うどん」が好きだったが若いころ「蕎麦屋」にアルバイト勤務してから変わった。
二八を打つそのお店の冷たい「田舎そば」が大好きだった。

ふと幼いころの近所の食堂の出前の「鍋焼きうどん」を想い出す。
くたくたにになった「うどん」にくたくたになったエビ天ぷら。赤いかまぼこにネギにわかめ。
年に一度くらいの冬の「ご馳走」
家の窓から見える雪景色も住まいもとうの昔に無くなっていているのに記憶の中では鮮やかによみがえる。
その記憶は本物かどうかも分からないほど年月がたった。
だた田舎にいたころの「なんでもない」記憶がついでに思い出されるので気分が悪い。
人間は本当に「悪いこと」しか覚えていない。
その記憶が捏造だろうが妄想だろうが私はあの場所で生まれ育ち、その場所を出て今ここで生きている。
中身は変わらないまま身体ばかりが大きくなった。
見え張って大人ぶって人間味のない私自身は「もどき」で充分だ。
嘘がばかりで本物が一遍も混じっていない人生を私は名誉に思う。
それが私なんだもの。
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